資本コスト経営(4)資本効率と資本コスト

5.資本効率と資本コスト

資本効率を高めること、そのひとつの指標であるROEを高めることは株価の上昇に寄与する、そして株価が高まることは株主の利益になるだけでなく、様々な経営上のメリットをもたらす、そのようなことをここまで述べてきたわけです。

では、資本効率と“資本コスト“とのかかわりはどうなっているのか、このことに触れる必要があります。
例えばROEは高い方が良い、仮にそのように単純化したとして、では一体何パーセントを目指すべきなのか、それは企業によって違いがあるのか、そのようなことを検討することが必要となります。

そこでまず「資本コスト」の意味について考えてみましょう。
「資本コスト」、特に「コスト」という言葉が混乱を招くわけですが、これはコストというよりも目標投資利益率と言い換えるとわかりやすいでしょう。
株式を引き受けることで資金提供している株主、社債などを通じて資金提供している投資家、更には融資によって資金提供している銀行などの金融機関、これらの資金提供者が求める提供資金に対するリターンが資本コストです。大切なことは実際に支払っている利息や配当金などのコストではなく、「資金提供者が求める、あるべきリターン」というところが重要です。

例えば、株主に対する還元の方法のひとつが配当金の支払いですが、配当金の金額の多少は企業業績によって左右されます。業績が特に悪い際、無配当になることもあるでしょう。実際に支払われる配当金がゼロであるからと言って株主がそれで満足しているわけではありません。
つまりここで資本コストと呼んでいるのは、実際の支払い額ということではなく、支払うべき額と理解する必要があるわけです。

企業が獲得した収益(売上高等)からその収益を獲得するためにかかった原価~製品・商品・サービスの調達に必要な原価、従業員への還元である人件費、税金、その他の諸経費~を控除し、更に将来の発展のための必要な投資にかかる資金を控除した上で残った余剰金から資金提供者が求めるリターン、つまり資本コストを支払ったと仮定した場合に、それでもなおかつ余剰のお金が残った場合、それは企業価値の増加を意味し、株価アップの可能性が高まるというわけです。

このようなことから、企業としては株主が求める配当金などのリターンを目標、即ちハードルレートとして経営を行うことが株価アップをもたらすと考えられるわけです。

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