4.ROEと株価の関係
ここで一旦ここまで述べてきたことを整理してみましょう。
わかりやすく簡単に図解したいと思います。
つまり簡単に言えば、資本効率を高めると株主価値即ち株価が上がり、そのことによって株主への利益還元や有利な資金調達のほかたくさんの有利なことが実現する。そのように展開してきたわけです。
実はひとつご説明していないことがあります。それは「a.資本効率を意識した経営は不可欠である」なぜなら「b.それは株主価値(=株価上昇)につながるから」の根拠についてです。
資本効率に関する経営指標の中にROE(株主資本純利益率)が存在します。計算式は以下の通りです。
ROE=当期純利益÷株主資本
つまり、株主から預かっている資本(株主からの出資分及び獲得した利益の過去からの蓄積額など)を年率何パーセントで運用できたかを示す指標です。
損得の視点から考えて、今手元に100万円のお金がある、そしてこれを一年間運用し、一年後に102万円になるのと110万円になるのとではいずれが得か、誰の目にも明らかなわけです。
この場合、前者は年率2%、後者は年率10%で運用できたということになります。
株主にとっての100万円に相当するのが株主資本であるわけですから、これを運用してどの程度効率的に純利益という形でリターンを得られたかは重要である、ということです。
この運用が上手な企業の株は買われて株価は高騰する、そういうことが理屈の上で考えられるわけです。
実は、もう随分以前になりますが、私が主宰する経営塾において、経営指標の研究を行った際に株価と関係の深い経営指標を相関分析によって明らかにしようとしました。
2010年の研究会でしたが、塾生さんに当時優良だと思う企業名を挙げていただきその中から20社を選んで分析をしたわけで、その意味で優良企業に偏ったデータであるという前提はつきますが、以下のような結果を得ることができました。
選択した企業(20年近く前の評価、今の評価との違いを考えるのも面白いですね)
京セラ キーエンス 任天堂 トヨタ キヤノン 日本電産 三菱商事 ファーストリテーリング ニトリ ヤマダ電機 マクドナルド サイゼリヤ 王将フーズ ヤフー 楽天 ベネッセ スクウェア セコム オリエンタルランド ヤマト
決算期は、キャノン:‘09/12 ファストリ:’09/8 ニトリ:’10/2 マクドナルド:‘09/12 サイゼリア:’09/8 楽天:‘09/12 の6社以外はすべて’10/3決算期
PBRは株価純資産倍率で「株価÷一株当たり純資産」で計算され数字が大きいほど株が割高で売買されていることを意味します。
散布図を見ると明らかにROEとPBRとは正の相関関係があると見て取れます。
なお、ご参考までに、自己資本比率と営業利益率とPBRとの関係はこんな感じでありました。
ROEとの相関の大きさを実感いただけるのではないかと思います。
ちなみにこの分析を行ったずっと後、2014年8月26日の日本経済新聞朝刊にこんな記事が掲載されました
ROEが8%を超えたあたりから急激に株価の上昇が認められるとのことです。
次回につづく
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