コロナウィルス、国際的にはCOVID-19という呼び名が一般的のようですが、今回は一切これとは関係なく日米における経営環境の違いについて考えてみたいと思います。
日本における資金調達環境と労働市場は年とともにどんどん小さくなってきておりますので、今回述べます管理会計における差も縮まってきています。が、依然としてその差は小さくはないと考えます。
また、株式非上場企業においては特に資金調達環境は従来と変わらず間接金融中心であり、以下に述べます違いはより顕著に現れていると見ることができます。下に資金調達環境&労働環境→経営スタイル→管理会計というながれで特徴を要約してみました。
アメリカにおいては、株主からの短期収益圧力に経営者はさらされており、それに応えていかないと経営者自身の進退も危ういものとなります。いきおい、株主を強く意識した「短期的利益追求」「株価に直結する資本収益性重視」、それと連動して投資についても投下資本に対するリターンが重要視されます。
また、短期的な利益をあげ続ける必要性から、環境変化に対して迅速かつ臨機応変に対応した製品開発が経営戦略の中心となり、管理会計においても短期志向の利益管理、製品事業部を中心とした組織運営に連動した業績評価が行われます。
労働環境は流動的で短期的な雇用調整が可能な反面、日本のように安定的にスキルのある従業員を常に確保することが容易ではないことが多く、結果として統制力の強い組織運営が行われます。そのことから決してスキルの高くない従業員でも一定水準以上の仕事ができるように業務は徹底的に標準化され、管理会計においては標準原価計算による原価維持が重要視されることになります。
一方日本においては、比較的株主からの圧力の度合いは低く経営者の地位は安定的です。その結果長期的な生存・成長・高シェアが重視されることになります。そのことから、労働市場流動性の低さもあり、迅速的臨機応変な製品戦略よりも経営資源の長期的蓄積が重視されます。
これらを前提として経営戦略は長期にわたりグループダイナミクス的に組織内に蓄積された能力(組織構成員の相互作用による成長)を活かした原価企画など生産管理の高度化などオペレーショナルものが中心となります。
したがって、管理会計において重視される指標は、成長・シェア・成長を前提とした売上利益率が中心となり、投資の意思決定においては借入返済を意識した回収期間に重きが置かれます。
このように米国に比べて短期的で精緻な管理の必要性が低いと考えられてきたからか、管理会計に対するニーズは最近まで低く、会計といえば財務会計と税務会計により視点があったと言えます。
以上のように、両国の経営環境・経営スタイル・管理会計をコントラストをつけて述べると以上のようになります。しかし、近年では両国のこれら環境や経営においてはその差は著しく縮まりつつあり、日本においても株主を意識した経営、環境変化への迅速な対応を実現する戦略への転換が起きています。
このことから、管理会計においても米国流のやり方を取り入れ、一方では日本において発展してきた原価企画やアメーバ経営などの独自の手法と融合させた更なる進歩が必要です。