資本コスト経営(2)資本コスト経営と株主

2.資本コスト経営とは何か?

尾ひれを廃してストレートに言えば、それは株主を強く意識した経営を行うということになります。
多くのステークホールダー(企業を取りまく利害関係者)の中で、資金の提供者である株主の満足度を高めることに主眼を置いた経営と言い換えることができます。
ステークホールダーと一口に言っても、株主以外にも従業員、銀行などの金融機関、仕入先や販売先などの取引先、一般の消費者、さらに広く社会、あるいは公としての行政など多くを含みます。

特に、働き方改革やダイバーシティマネジメント、パワハラなどが注目される昨今、ステークホールダーとしての従業員にこれまで以上の配慮が求められるのは言うまでもありません。
また、サステナビリティの観点から地球環境や差別、児童虐待などの問題をかかえる社会も極めて重要なステークホールダーです。企業が自らこのようなことについて直接問題を起こさなくても、例えば海外の委託先が起こした問題の責任を追及されたナイキの例からわかるように、グローバル化した昨今、対岸の火事とみることはできません。
そのような中でいかに外国人株主が増加したからと言って過剰に株主の利益のみに重心を置いた経営が好ましくないことは多くの人が認めることかと思います。

ただ日本においては、安定性重視の観点から過剰にキャッシュを保有するなど資本効率に配慮しない傾向もまた無視はできません。
そのような意味から、米国の投資家やオイルマネーなど海外の株主の視点を理解しておくことは今後の経営を考える上において避けては通れない課題です。

3.株主の視点?

このように「株主の視点」「株主価値経営」などと言いながら原点に戻ってみて、何故株主を意識する必要があるのか、そこから話を始めてみたいと思います。
そのようなことは欧米の方からすると議論するまでもない、と切り捨てられそうですし、資金提供者への還元を考えるのは当たり前ではないか、ということにもなりそうです。
しかし、資金提供者である株主を大切に考えるのは当たり前、そんな簡単に片づけては資本コスト経営の意味は理解できないと考えるわけです。

株主価値経営、それは端的に言うと「株価を意識するということ」と言い換えることができます。事実として上場企業の経営者は常に株価の動きに一喜一憂しているという現実があります。では、何故、株価を意識しなければならないのでしょうか?

その理由としては以下のような事柄があると考えます。

①株価上昇によって株主に利益還元ができること。これはまさにストレートに株主価値と言えます。

②有利な資金調達がやりやすい。これは企業の成長を考える場合事業活動に大きく貢献します。
例えば1株2,000円の会社が10億円の資金を調達するために必要な発行数は500,000株です。発行済株式総数が10,000,000株の場合この新株発行によって株式数が5%増加することになります。
もしこの会社の株価が2,500円に値上がりしたとしたら、10億円の資金調達のために必要な発行数は400,000株となり発行済株式総数は4%の増加にとどまります。
発行済株式総数が増えるということはその分配当金の支払などによる資本コストが上昇することになります。(配当は株価に対する率ではなく1株当たりで決まります)
また、発行済株式総数が増加するということは1株当たり利益や1株当たり純資産などといった株価に影響を与える指標を悪化させ、その結果株価が下がるという悪循環になりかねません。
株価が下がると市場や金融機関からの評価も下がり、将来における資金調達にマイナスの影響が出ることも考えらるとも言えます。

③株価は企業経営の全ての結果であり、経営者にとって最も重要な業績評価指標であると考えられること。従って、株価そのものが経営者自身の評価につながり、経営者の報酬や進退にも直結することも珍しくないと言えること。

④時として株価は短期的な損益ではなく長期的な視点から経営を評価し得る指標となること。

⑤株価が高いと買収に必要な資金が多額になり、敵対的買収のターゲットになりにくいこと。

次回につづく

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