役に立つ原価計算とは?

年商50~300億円規模の中堅製造業の原価計算制度作りをお手伝いすることが頻繁にあります。

このような製造業において原価計算を行う目的としてニーズが多いのは次のものです。

(1)適正な販売価格を知りたい、今の価格が正しいのかどうか知りたい
そもそも、現在の販売価格は原価を反映した適切なものかどうかを知りたい、これはどこの企業においても原価計算に対して最初に持つ思いです。
そして、最近特にご相談が多いのが、価格競争の観点です。
つまり、
「厳しい価格競争下、今の原価計算によってもたらされる原価情報は本当に正しいのか疑わしい」
「今の原価ではとても価格競争に勝てない」
などという主に営業部門からのニーズです。

(2)原価を下げて、コスト競争力をつけたい・利益を増やしたい
原価を分析して、改善するべきポイントが目に見えるようにするために、原価計算と月次分析を適正化したいということです。

一方で、原価計算などという管理のためには「なるべく手間はかけたくない、あまりコストをかけたくない」という本音も見え隠れします。

ところで、このような企業様において原価計算というものに対して、非常に複雑で細いイメージをお持ちになっていることがあります。
書店に並んだ原価計算の本、どれをとっても経営者にとってはなかなかとっつきにくいイメージを醸し出しています。

実は、書店に並ぶ原価計算書の多くは、上場企業用で、なおかつ外部報告用だということをご存知でしょうか?
上場企業においては、財務報告を厳格に規定された基準に則って行うという義務があるため、原価計算においても決められた水準以上のものが求められます。
ただ、それはあくまで外部に対して一般に公正と認められた基準で報告を行い、投資家などにおいて誤解を生まないことを主たる目的としています。

外部報告よりも経営の成功を目的とした原価計算に絞った場合、そこまで厳格な基準でこれを行う必要はないと言えます。
しかもその実、上場企業でさえ簡略化しているというのが現実なのです。

ましてや、未上場の会社が、そんな細かくて複雑なことを考える必要はありません。
要は、目的に合わせて本当に必要なことだけを、シンプルに行う、それが大切だと言えます。

早稲田大学教授の清水孝先生は著書「現場で使える原価計算」(中央経済社)の中でこうおっしゃっています。

=引用=
公認会計士試験を受験する学生を指導するために、出題された問題を分析し、練習問題を作成した。
問題を作成する時に、現実にはあまりなさそうな前提が多かったり、計算があまりにも複雑すぎることが気になっており、公認会計士や実務家の方々にいろいろと質問してみた。
その答えは、そうした前提や複雑性が実務上意味を持つことは多くはない(以下省略)
=引用ここまで=

試験をやる以上、差をつける必要がある。
そのためには多少細かくても、多少実務とはかけ離れていても、複雑性を高める必要があるということなのでしょう。
こういったことに、実務家が惑わされる必要は全くないわけです。

絶対的に大切な事は、それぞれの企業の経営実態と経営ニーズによってやるべきことを絞り込むことです。

・経営戦略(今後の事業領域、競争優位性のための重要機能など)
・製品特性
・生産形態(受注生産・見込生産、人中心・機械中心、工程数、外注依存など)
・組織
・原価計算の目的

そんな経営的な視点をしっかりと持ち、整理し、そして必要最低限の原価計算の仕組みを作る、そのことこそが重要なポイントであると言えます。

そして大胆に言えば、原価計算として取り組むべきことは次の4つに絞り込むことができます。

(1)直接原価計算
原価を変動費のみで認識する方法であり、目的は次の3つです。
①在庫変動による損益の歪みを防ぐ
②操業度基準でコストのシミュレーションができることから(3)の変動予算を使った分析においては不可欠な方法
③価格決定において状況に応じた柔軟な判断ができる情報を提供する
(2)行動重視の予算管理
数値計画と行動計画とが断絶なく有機的につながった年度計画を作ることは成功のための第一ステップです。
目標利益・目標売上・限界利益目標・固定費枠(財務目標) → それぞれの目標と明確に連動した行動計画
この関係性を見える化することが肝要です。
(3)KPI管理
損益などの財務のみを追いかけるのではなく、財務目標を達成するための行動計画、その行動が確実に行われていること、そしてそれによって得られた成果を追いかけ続けることが肝要です。
(4)変動予算による月次統制
年初予算と実績との比較だけでは多くの問題が隠れてしまいます。もうひとつ実際の操業度を前提とした変動予算の考え方を付加することでより立体的で意味のある分析が可能になります。

原価計算を考える際、是非上記4つの点を視野に入れられることをお勧めしたいと思います。

 

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